INTRODUCTION -企画概要-

《企画意図》

アメリカ大陸に上陸した最初の日本人として、日米関係の構築に大きく貢献したジョン万次郎の生涯の映画化は、“日米の信頼関係の崩壊”がささやかれている今、日米関係の原点回帰の為にも是が非でも実現すべき映画企画である。

人の価値とは、一体、何なのだろう?
幕末期から明治維新において、日米間の架け橋となった男・ジョン万次郎の生涯は、その問いかけの連続であった。

太平洋を漂流し、アメリカの捕鯨船に救助され、アメリカへ渡り、航海技術や造船技術や様々な勉学を修めたジョン万次郎は、異国で得た知識を鎖国期の日本へ持ち帰り、幕末の英雄たちに多大な影響を与え、その点した火は、たちまち日本国中に広がっていき、やがて新国家建設への原動力となった。 アメリカで学んだ人道主義、民主主義と、サムライ社会に残る偏見との狭間で苦悩しつつも日本の近代化に一石を投じたのである。

これまで伝わってきたジョン万次郎像は、異常な体験をした幕末の漂流者、冒険家、立身出世者であり、海外雄飛で活躍し、波乱万丈な人生を送った英雄というイメージが定着している。 しかし、彼はけっして野心家ではなく、金や地位や名誉にもいっさい固執することなく、生涯を通して土佐の漁師という出自を根底に置いていた。 アメリカでは東洋人として差別され、日本に帰ればスパイとして命を狙われるが、どんな過酷な差別を受けても、どんな危険な状況に陥っても逃げることなく、勇気と誠実さを根本に対処していくという精神に貫かれていた。

武士道精神に「義理深く、思慮深く、慎み深く、心願鋭く道理を見極める」とある。この精神は武士階級のみでなく、当時の日本の庶民にまで儒教的道徳観念として行き渡っていた。勿論、それを実践するとなるとすべての人が成し得たものではなかった。 異国の地で故郷日本を想うジョン万次郎の中にはこの精神が深く蘇っていた。 漁師である彼は、幼い頃より働きに出て、様々な体験をすることで、この精神を生きる知恵として身につけていったのである。 彼もまた、階級を越えた「ラスト・サムライ」の一人なのである。

自分の人生が勝者なのか敗者なのか、と拘泥する現代人が多い中、この映画では、そんな現代人に一石を投じたい。 自己の栄誉栄達に執着せず、今この瞬間を精一杯生きた人間・ジョン万次郎を徹底的に描き出すことで、人の生きる価値とは何なのか、を問いかけていき、見終わったあとには、知恵と勇気と感動が湧き上がる作品として完成させるものである。

映画「Manjiro」は2004年から脚本を作り始めました。ハリウッドで「ラスト・エンペラー」などを手がけた敏腕プロデューサーJohn Dalyが興味をもち、ハリウッド映画として制作したいと言うことで2007年から一緒に脚本改訂し準備を進めてきました。 しかし、不幸にも2008年に彼が胃癌であることが分かり、突然同年の10月に他界しました。John Dalyの協力を得た今回の脚本は完成度が高く、ハリウッドでも通用する脚本に仕上がっている。


監督:交渉中

脚本:神波史男 / 松山賢二郎
深作欣二監督の名作「華の乱」主演・吉永小百合、松田優作、「火宅の人」主演・緒方拳、石田あゆみ、などの作品を
手掛け、「おろしや国酔夢譚」佐藤純弥監督・主演・緒方拳などの代表作がある。

脚本協力: John Daly
「ラスト・エンペラー」「プラトーン」「ターミネーター」などで3度のアカデミー賞受賞作品のプロデューサー。

撮影場所:米国70%、日本30%の撮影(沖縄、高知、京キ、他)

配給:映画は全編英語劇(日本の撮影は日本語)の世界配給。